1 はじめに
越後路に梅や桜の花が咲くころに、あちこちの村に幟が立ち、祭り囃子が聞こえてきます。村の鎮守様のお祭りです。
祭りをにぎやかにするものとして神楽がありますが、三条市に伝わる「三条神楽」という民俗芸能をご紹介します。
2 「三条神楽」とは
「三条神楽」は現在市内の三条八幡宮、一ノ木戸神明宮、田島諏訪神社、大崎中山神社、保内小布勢神社、塚野目白山神社の6社で伝承している神楽を総称しています。各社演目は少しずつ異なるのですが、総計32舞という演目の多さが認められ、(普通の神楽は12舞程度しか伝承されていない場合が多い)昭和38年に新潟県の無形文化財に指定されました。
「三条神楽」は出雲流の神楽ということですから、江戸時代に山陰地方から伝わったと思われます。また三条を始め、近隣の神楽は八幡宮を中心として広まったと伝えられています。
3 神楽の内容
さて、神楽の内容ですが、多くの舞は『古事記』にちなむものです。例えば「鳥形(とりかた)」という舞はニワトリの動きを模した舞ですが、天の岩戸にアマテラスオオミカミがお隠れになったときに鳴かした「常世の長鳴き鳥」の舞だと言われています。
子供たちにも馴染みの舞は「福神遊(ふくじんあそび)」でしょう。恵比寿、大黒が楽しく遊ぶ舞ですが、最後にお菓子を見物人に撒きます。子供たちもよく知っていて、この舞になると、湧いてくるように集まってきます。
神話ではなく能や猿楽からの題材を基にした舞もあります。「深山錦(みやまにしき)」や「宝剣作(ほうけんさく)」といった舞です。前者は能楽の「紅葉狩」に、後者は同じく能楽「小鍛冶」に取材したものです。特に「宝剣作」は金物の三条を代表する神楽で最近では種々のイベントでも上演されます。いずれも豊かなストーリー性をもった舞ですが、筋を知らなくても楽しめる内容です。
4 稚児舞について
小学校の子供にかかわることとして、各社とも稚児舞という小学生の演目があります。4人で舞う場合が多く、交代の時期は指導が大変です。白山神社の例では、稚児が6年生になった秋に次の稚児として保育園の年長組の子供を4人選び、とりあえず秋祭りに一舞、翌年の春にすべての舞を上演できるように指導しています。幼児に形や所作を教え込むわけですが、落ち着きがでてきたとか、家族の会話が増えたなど、いろんな場面で地域の教育的効果が現れているように感じられます。
5 「三条神楽」の現状
こうした伝統芸能を保存しようと、各神社の協力で「三条神楽保存会」を組織し、年1回の神楽鑑賞会を開催、広く市民に知っていただく活動をしています。また、鑑賞会では毎回市内で和太鼓を中心にしたクラブ活動をしている小学校から賛助出演をいただいています。さらに、視聴覚ライブラリーに記録を保存してもらっています。 |