学校現場の授業改善への努力と工夫は着実に学力向上をもたらしてきている。PISA等の調査によれば、我が国の子どもたちの学力(数学的リテラシー、読解力、科学的リテラシー)は、世界のトップレベルを回復していることになっている。この間、各学校でも様々な授業改善が継続的に行われ、一定の手応えを感じたことであろう。社会からの厳しい視線はやや緩んできたように感じられる。
しかし、学力向上への確かな歩みを進めているにもかかわらず、学習への動機付けや実社会との連関、自己肯定感の低さが各種の調査から指摘されている。
TIMSS(2011年)調査報告によれば、「数学・理科の勉強は楽しい」は国際比較でマイナス23%、「数学・理科を使うことが含まれる職業に就きたい」はマイナス34%となっている。また、「高校生の生活と意識に関する調査報告書」(2015年8月)によれば、「自分には人並みの能力がある」という自尊心を持っている割合は世界の先進国に比べ極めて低く、「自分はダメな人間だと思うことがある」割合は群を抜いて高い。
私は、この調査結果に強い危機感を抱いている。これまで子どもに理解させようと懸命に教材研究し、指導法を工夫してきたにもかかわらず、私たちの指導は子どもに学ぶ喜びや将来への夢を抱かせる指導には至っていなかったのである。結局のところ、私たちが求めていたのは数値で示される結果であり、自信や意欲を高める指導には至っていなかったということである。アクティブ・ラーニングの目指している背景にあるものとは、まさに、自信と意欲を持たせる教育へと学習の質を転換せよとの強い期待であると私は捉えている。
では、個別化・流動化が加速する21世紀を豊かに生き抜いていくためには、子どもたちにどのような資質・能力を育成していく必要があるのか。文部科学省では、学習指導要領改訂の視点の説明の中で育成すべき資質・能力の三つの柱として、次のように示している。
① 「何を知っているか、何かできるか」(個別の知識・技能)
② 「知っていること・できることをどう使うか」(思考力・判断力・表現力等)
③ 「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」(人間性や学びに向かう力等)
ここから見えてくるのは、他者と協働しながら「正解のない問題」に対応する力や知識・技術を活用しながら新たなものを創り上げていくような力ではないだろうか。これまでの問題が解けるだけの力では不十分であり、みんなが納得する解、みんなが最適と思う解を導き出していくような力が求められているのである。こうした力こそ、「真の学ぶ力」と呼ぶに相応しいものであり、アクティブーラーニングの積み重ねを通して育ってくるものであろう。そう考えると、私たちにはアクティブーラーニングの視点からの不断の授業改善が求められているのである。学習指導要領が全面改訂される前に是非とも確認しておきたいものである。 |