学制が明治五年に公布されてから令和四年九月四日で百五十年を迎えたことを記念し、九月五日に天皇皇后両陛下のご臨席の下、「学制百五十年記念式典」が開催された。天皇陛下より、「近年は、ICTを積極的に活用することにより、一人一人に最も適した学びの環境を整える取組も行われていると聞いています。このように、時代や社会の変化に対応しつつ、誰一人取り残されず、誰もが自分らしさを大切にしながら学ぶことができ、一人一人の可能性が最大限に引き出される教育の実現に向けた動きが着実に進むことを期待いたします。」とお言葉を賜った。 百五十年という長き歴史の上に、今、学校では「令和の日本型学校教育」の実現に向けて取り組んでいる。「個別最適な学び」が進められるよう、これまで以上に子どもの成長やつまずき、悩みなどの理解に努め、個々の興味・関心・意欲等を踏まえてきめ細かく指導・支援することや、子どもが自ら学習の状況を把握し、主体的に学習を調整することができるよう促していくことが求められている。また、「個別最適な学び」が「孤立した学び」に陥らないよう、探究的な学習や体験活動等を通じ、子ども同士で、あるいは多様な他者と協働しながら、他者を価値あ る存在として尊重し、様々な社会的な変化を乗り越え、持続可能な社会の創り手となることができるよう、必要な資質・能力を育成する「協働的な学び」を充実することに力を注いでいる。 これらの学びを支えるのは、教師である。「教育は人なり」という言葉が示すように、教育は教師の力量に左右される。教員免許更新制の発展的解消に合わせ、「令和の日本型学校教育」を担う新たな教師の学びの姿が、中央教育審議会特別部会でまとめられている。教師に共通的に求められる資質の具体的内容の中に、教職に必要な素養として、「豊かな人間性・責任感・人 権意識・社会性・使命感・教育的愛情・倫理観等」が挙げられている。 一方で、「令和の日本型学校教育」の実現と平行して、働き方改革にも取り組んでいる中、ワーク・ライフ・バランスを大切にしている教師が多い。また、新型ウイルス感染症禍で、ワーク・イン・ライフへと、仕事と生活の捉え方を変えていこうとする動きが見られる。教師が人として、心にゆとりをもって子どもに接することで、子どもがあこがれる存在であってほしい。教師も一人一人個性があり、強みをもっている。強み
を生かし、ワーク・イン・ライフの考え方を取り入れながら、忙 しくとも楽しく笑顔で子どもたちと接する毎日を願う。 「個別最適な学び」「協働的な学び」の主語を子どもから教師に置き換えると、学びの実現を目指す主体は校長である。校長も人である。校長の姿が、同僚である教師にあこがれる姿となっているか、自問したい。教師が子どもに正対するように、これまでの様々な経験を生かし、校長も教師に正対し、チーム学校のリーダーとしての誇りをもち続けたい。 天皇皇后両陛下の所作を目の当たりにし、人が人に与える影響の素晴らしさを、改めて実感した。
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