子どもたちの動きがぎこちない点は以前からも言われてきたことであるが,当校の児童も例外ではなかった。例えば,体育でベースボール型の授業をすると,ボールを狙ったところにうまく投げられない,バットを振ると握ることができずに,ボールと一緒に前方へ飛ばしてしまう,休み時間に,友達と鬼ごっこをしていて,友達同士でよけきれずにぶつかって怪我をする,などである。これは,身体を動かす経験の減少や遊びの環境の変化が,動きのぎこちなさの要因と考えられる。
そこで,本校では,四年前から体育部を中心に組織的に,身体の巧緻性の向上を目指した取組を進めてきた。巧緻性を高めることで体力の向上につながることをねらった。
1 SAQトレーニングで走力向上
SAQトレーニングは,重心移動の速さに加え,動きに素早く反応したり,身体をコントロールしたりしながらラダーを走り抜ける動きを継続して行い,巧緻性を高めるものである。具体的には,体育館にラインテープでラダーの線を設置し,体育授業にラダートレーニングを取り入れた。簡単な動きから難しい動きへ移行させ,10段階のレベルを児童に提示し,継続して取り組めるようにした。
初めは,恐る恐るゆっくりと走り抜けていた児童も,レベルアップした動きを目指して繰り返し取り組んでいった。慣れてくると素早い動きに挑戦したり,休み時間にも遊びながら取り組んだりする児童が増えた。
結果,1回目の体力テストで計測した時点で,50m走の記録が,もう少しで全国平均に届くといった児童が,2回目の体力テストでは記録を伸ばし,全体で71%の児童が全国平均を超えることができた。
2 コーディネーショントレーニングで投力向上
コーディネーショントレーニングは,投力向上のための巧緻性を養うことを目的として体育授業で取り組んだ。脳の神経系を刺激しながら身体を動かすこのトレーニングは,職員研修を行い,共通したトレーニングとそれぞれが工夫したトレーニングを行うことで,ボールを投げる距離を伸ばすことができた。2回目の体力テストの記録で,80%の児童が,ソフトボール投げの記録を向上させた。
投げる前のステップやボールをリリースするタイミングを身に付け,より自分の身体に合う理想的な投てきをすることで記録を伸ばすことができたと考えられる。
子どもの動きのぎこちなさを課題としたところから出発した取組であったが,結果的に身体の巧緻性を高めることが,運動能力や体力の向上につながった。 |