一 黎明期の研究開発
平成八年、当時勤務していた学校が、小学校での英会話に関する研究開発学校の指定を受けた。その頃は、英語教育を小学校から導入することが適当かどうか、世論が二分されていた。このような状況下で、小学校で英会話をどんなふうに取り入れたらよいのか、学習指導要領の枠を超えて、実践的に研究する機会を得たのであった。
あれから約二十五年。改めて、当時の研究成果を振り返り、外国語教育の教科化について、思うところを述べたい。
二 研究途上でぶつかった「壁」
研究開始に当たって、指導者から、次の二点について、強く指導を受けた。
「英語嫌いの子どもにしてはならない。」
「中学校で行われている指導法を、逆にするとよい。」
当時、中学校の英語指導は、「聞くこと」「話すこと」よりも、単語や文法を覚え、正しく「読むこと」「書くこと」が重視された時代であった。このような指導の影響もあり、英語を身近に感じられない生徒が、少なからず見られた。
指定を受けた研究が、「英会話」とあることからも、これまでの英語教育の在り方を見直し、音声中心の学習、子どもが楽しく学ぶ学習を求められていたことが分かる。
全教職員で、懸命に研究を進める中で、思いがけない「壁」にぶつかった。それは、定期的に行っていた英会話活動に関する意識調査で、興味・関心・意欲に関する設問に、否定的な回答をする子どもの割合が、高くなったのである。
その要因を探ると、研究が進むにつれ、子どもにより高度な活動を求めるようになり、知らず知らず負荷を大きくかけていたことが、判明した。そのため、初心に返り、「子どもが楽しい。」と思える活動にしようと、研究推進の在り方を根本から見直したのであった。
三 「慣れ親しむ」ことを基盤に据えて
外国語の教科化に伴い、「聞くこと」「話すこと」だけでなく、「読むこと」「書くこと」も、扱われるようになった。ただし、学習指導要領解説にもあるように、これらの指導は、十分に慣れ親しんだ上で身に付けることが重要である。「書くこと」でいうならば、以前学習したからといって、何も見ずに英語の語句や表現を書くことまで求めているものではない。つい、理解の速い子に合わせて、難しい学習を強いることのないように、心したいものである。間違っても、中学校入学前から、「英語は、もうこりごり。」と、シャットアウトするような子どもを育ててはならない。 |