1 はじめに
保護司をされていた方からお聞きしたお話が心に残っている。その方は,「たとえ非行に走ったとしても,『心にふるさとのある子』は立ち直れる」とおっしゃった。心にふるさとのある子―地域の人から愛され,地域の人の願いに触れ,地域とのつながりの中で育った子は,心の寄る辺があり,立ち直る力をもつ。学校が家庭・地域と連携する意義は,子どもたちの心にふるさとを形づくるためだと考えている。家庭・地域との連携について,取り組んでいることや考えていることを紹介する。
2 地域の温かな眼差しに応える子に
今年度,中庭にウサギを飼い始めた。ウサギのために中庭が草原にならないかと相談したところ,「おれがやってやろう」と申し出てくださった方々がいた。土留めのU字溝をユンボで据え,良質な土をトラックで何台も運び,日陰があった方が涼しいだろうと単管で棚を作り,クローバーの種を蒔く。そんな作業が何日か続いた。作業を見ていた子どもたちが,「ありがとうございます」と声を掛けた。「子どもたちのために」という地域の方の思いが,自然に子どもに伝わっている。学習の講師,図書ボランティア,花植えの先生など地域の方との交流をとおし,自分に注がれている温かな眼差しに気付かせていきたい。
3 地域を大切にする思いをつなぐ子に
毎日,夕方になると,少年野球の監督としてグラウンドで指導をしてくださっている方がいる。その方に,「大変でしょう」と尋ねたことがある。返事は,意外だった。「地域のために,おれができるのは野球かなと思った」。
地域のためにできることを,という思いをもって暮らしている人がいる。地域の大人が誠実に一生懸命生きる姿を,子どもたちに学ばせたい。
今年度は,6年生が総合的な学習の時間に「こんなすごい人がいる」という学習で,地域に生きる先達を学ぶ計画を立てている。無農薬で農業に取り組んでいる人,地域の祭りに尽力している人などの生き様をとおし,ふるさとへの誇りを抱かせるとともに,祭りなどで,子どもたちが地域に貢献する機会も作っていきたいと考えている。
4 おわりに
今秋,校歌に歌われる金倉山に,全校登山を計画している。保護者,地域の皆さんも一緒にとお誘いしている。山頂から眺める景色は,格別だろう。子どもたちの脳裏に,ふるさとの記憶として残ってくれることを願っている。 |