1 歴史的背景
1980年代の「荒れる中学校」現場は、70年代までの画一的な「抑えつける」指導では対応し切れなくなり、カウンセリングマインドに基づいた教育相談や学習支援に取り組んだ。90年代からの「いじめ・不登校・学級崩壊」に対しては、より積極的な予防的生徒指導として「ソーシャルスキルトレーニング」、「アサーショントレーニング」、「ピアサポート」、「構成的グループエンカウンター」、「Q-U」等の問題解消の手段に取り組むようになってきた。当校も縦割り班活動や「Q-U」による学級診断を実施しているが、ややもすると手段と目的が逆転してしまうことがある。あくまでも、手段であって「Q-U」や「ピアサポート」をやれば、問題が解決するわけではないということは承知しているはずなのに、子どもを語る会や授業の研究協議会などで、「データが…、数値が…。」とこだわる場面に出会うことがある。検査結果を、学級担任の分析や認識と参観者がみた子どもの実態のギャップの発生原因を探るための方策として使うくらいの柔軟性が欲しい。特に、小学校の学年単学級だけの小規模校では、分析にそれなりの注意を払わなければならない。そのためには、まず子どもの話を「聴く」ことだと思う。教育相談だけでなく、日常の子どもとの会話の中から本音を聞き出す力を付けたい。
2 生徒指導と特別支援教育
それらの資質と同等に「発達障がい」に対する知識ど指導スキルが、現在「生徒指導」では必須事項となっている。30年間中学校現場に勤務してきて感じたことは、教育的配慮の必要な子どもに対する支援、ソーシャルスキルの獲得は、小学校3年生までが勝負だということである。高学年になると発達した自我が、支援を素直に受け入れさせないことが間々ある。加えて、二次障害を起こしていると指導はかなり厳しい。ところが、特別支援を必要とする生徒の相当数が、二次障害を起こして人間関係をうまく結べないまま中学校に入学し、不適応状態に陥ってしまう事例が多数ある。そのような現状から考えれば、小中が連携して取り組む生徒指導上の課題の1つは、出来るだけ早期からの特別な教育支援だと考える。学習のユニバーサルデザインは、発達障がいのある子どもだけでなく、一般の児童生徒に対しても効果があることが実証されている。「SST」であれ「特別支援教育」であれ、全ての子どもによりよい学校生活を送らせるために、全ての教職員がそのための基本的な力と知識、
技能を身に付けなければならない。 |