1 はじめに
「特別支援教育は、教育の原点である」教職に就いてすぐ先輩から教えていただいた言葉である。(当時の名称は違うが…)子どもが何を望み、その過程でどんなつまずきがあるのか、子どもの気持ちに寄り添いながら、対応していくことは、私たち教職員に必要な資質の一つである。
2 ウェルビーイングの向上
令和5年6月、第4期「教育振興基本計画」が閣議決定された。「持続可能な社会の創り手の育成」と「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」がキーポイントである。子どもが抱える困難が多様化・複雑化する中、インクルーシブ教育システムの推進により、支援を必要とする子どもの長所・強みに着目する視点を重視し、共生社会の実現に向けた教育を推進することが求められている。
3 提案・交渉型アプローチの導入
当校の様子を見ると、取り組むべき課題を前にして、努力するどころか、取りかかることすらできず、最初から諦めてしまっている子どももけっして少なくなかった。そんな子どもにどんな対応をとるか。叱る。「がんばれ」と激励する。厳しい態度で接する。改善する子もいるが、そうでない子もいた。すると、できないままの課題が蓄積し、ストレスをため、自信を失う。そして、自尊感情も低下させてしまっていた。そんな事態を打開しようと取り入れたのが、「叱らないが、譲らない」提案・交渉型アプローチである。これは、子どもが「できない」「どうしたらよいか分からない」と困ったときに、子どもの気持ちに寄り添いながら、問題解決に向けたいくつかの方法を「提案」し、子どもと「交渉」する中で、子どもが自主的・主体的に「選択」できるように指導・支援する方法である。このアプローチを職員で研修し、指導に生かすようにした。すると、徐々にではあるが、子どもが簡単に諦めない、少しでもいいから挑戦しようという姿が見られるようになってきた。教職員にも変化が見られた。今までは、「すぐに改善・解決しなければいけない」という焦りの気持ちがあったが、「子どもの選択を待とう」「小さな進歩でも見逃さずに褒めよう」という意識となったという声である。子ども、教職員ともに笑顔が増え、ウェルビーイングの向上が図れた。
4 おわりに
まだ課題はあるが、この手法を継続し、子どもの心の中にあってうまく言語化できない本当の気持ちを引き出し子どもの「できた」という笑顔を輝かせたい。
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